固体レーザ

YVO4とは、イットリウム・バナデート結晶のことでYAGレーザと同じ近赤外線の
波長(1064nm)を発振するレーザ媒体である。

YVO4レーザ

YVO4とYAG結晶を比較すると、波長810nmのLDによる励起を考えた場合、
YVO4の吸収率及び、吸収バンド幅がYAG結晶よりも高く広いため、LDの温度制御が
YAG結晶に比べて容易となり、励起効率もYAG結晶より優れている。

またYVO4結晶は、物理的、光学的、機械的にもYAG結晶より優れており、
レーザによる損傷閾値も高い。
そのため、高出力でも安定したレーザ発振を行うことができる。

【 YAGレーザvs YVO4レーザ 】

加工におけるYAGレーザとの違いを、パルス幅 vs 繰返し周波数 vs レーザ出力(Wとエネルギー)のグラフを使って説明する。


レーザ平均出力と繰返し周波数とパルス幅の関係

【 レーザ出力 vs 繰返し周波数 】

まず、YAGレーザとYVO4レーザのパワー曲線を見た場合、両方とも山を持ったカーブを描く。
その山の部分が繰返し周波数の低いところにあるのがYAGレーザの特長で、
周波数の高いところにあるのがYVO4レーザの特長である。

たとえば、レーザ出力が同じ場合でも加工に対する効果が異なる。
YAGレーザの場合は低い繰り返し周波数域で高い出力(W)を得ることからエネルギー
(エネルギー=出力÷繰り返し周波数)が高くなる。
{10Wだとすると、YAGレーザの場合は10kHzくらいで10Wを出力し、
 得られるエネルギー(J)は1mJになる。}

一方のYVO4レーザは、高い繰り返し周波数域で高い出力を得ることからエネルギーが
YAGレーザに比べて低くなる。
{50kHzくらいで10Wを出力し、得られるエネルギー(J)は0.2mJなる。}

これは同じ10WでもYAGレーザとYVO4レーザとでは加工用途に応じて使い分けが
必要になることを意味する。
加工閾値が高い材料に対してはYAGレーザのようにエネルギーの
高いレーザ発振器が有効となる。

一方でYVO4レーザのエネルギーでも加工閾値を超える材料に対しては、繰返し周波数が
高くとれるYVO4レーザの方が高速に加工を行うことができるのである。

MEMO
パルス幅(1パルス当たりの時間≒材料に対しレーザ光が作用する時間)が長くなればなるほど材料に対し熱作用を及ぼす度合いが大きい。
そのため、熱影響を避けたい加工においてはパルス幅を短くする方がよい。
一方で、繰り返し周波数(1秒間に照射されるパルス数)が高くなればなるほど高速に加工が行える。
難加工材料といわれる比較的加工閾値が高い材料に対しては加工速度よりもむしろ加工ができることの方に重点が置かれる場合が多い。そのためパルス幅が長くてもエネルギーが高い(エネルギー密度が高い)YAGレーザの方が有効となる。
一方の加工閾値が低い材料に対しては、加工できることよりも熱影響を低く抑え、かつ高速に加工することが求められるためYVO4レーザが有効となる。

【 パルス幅vs繰返し周波数 】

YAGレーザとYVO4レーザ共に、繰返し周波数に比例してパルス幅が長くなる傾向にあるが、
傾きがかなり異なる。

YAGレーザの場合、10kHzの段階で20-30ns程度から始まるのに対し、
YVO4レーザでは数nsオーダーとかなり短い。
また、例えばYVO4レーザが10Wを得られるとした50kHz近辺では20-40nsで、
これに対しYAGレーザは、100ns近くまで長くなる。

以上より、繰返し周波数が高いところで高出力と比較的短いパルス幅をもつYVO4レーザは、
材料を加工する上で必要なエネルギーこそ、YAGレーザに劣るが、
材料の加工閾値に対しエネルギーが十分であった場合、YAGレーザと比べると
高速かつ熱影響の少ない加工を行うことができるといえる。

一方のYAGレーザは、YVO4レーザのエネルギーでは加工が難しい材料に対し、
より高いエネルギーをもつYAGレーザが有利である。
エネルギーが高く、パルス幅を長く設計できるという点で、熱加工向けにはYVO4レーザではなく
YAGレーザが使用されている。

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